神楽 ~神話の里の秋まつり~



このごろはできるだけ田舎の両親の所に帰るようにしている。田舎は島根県江津市桜江町川戸。仕事で大阪に単身赴任しているので、東京にいるのに比べたら随分と帰りやすい。両親もいい年になって帰れば後々の事を話すばかり。あと何回、僕はここに帰ってくるのだろうか。郷愁の念というものがこの年になって僕を駆り立てている。今一度、自分の中にある故郷の思い出をこの目に焼き付けておきたいのだ。

昨年の10月、神楽を見に帰った。神楽とは一年の収穫に感謝して地域の氏神様に舞を奉納するもので毎年この時期に行われる。神楽は地域ごとの神社で執り行われ、夜の9時ぐらいからスタートし朝方まで舞い続ける。終わって家に帰る頃には周囲が明るくなっていたものだ。







小中学時代には毎年のように見ていた。同級生たちと待ち合わせ、毛布をかかえて神社の中に上がりこみ、畳敷きの間で朝まで毛布にくるまって神楽を見ながら過ごす。必ずしも、真面目に鑑賞しているというわけでもない。途中おでんやうどんを食べたり、眠くなったらそのまま眠るし、思い思いに朝まで過ごすのだ。

正式には「石見神楽」という。元来は地域の氏神様を祀る神社で行われる「神事」なのだ。演目は30以上あるといわれる。題材は日本の神話などを基にした物語性のあるものが多い。島根県西部の各地にいくつもの団体があるようだ。





一演目あたり1時間近くもあり、十キロ以上ある豪華な衣装をまとい、スピード感のあるテンポで踊り続けるという大変に過酷なものだ。演者は舞い終わると息も絶え絶えで、肩で大きく息をしながら引き上げていく。観客からは「よーもーた!」(良く舞った!)と声がかかる。演者も観客もこの町の人で、みんな顔見知りなのだ。地域のみんなで集まって盛り上がる秋祭りなのである。













自分の生まれた町に今なおこのような伝統が残っていることに感動と誇りを覚える。できることなら末永くつながっていくことを望んでいる。島根を訪れようとする方は古代史から続く神話の里として出雲大社と合わせて石見神楽を堪能されてみてはいかがでしょうか。

浜田市石見神楽(浜田の夜神楽週末公演)
https://www.youtube.com/watch?v=gymhpJcqbtc&t=76s

島根観光ナビ
https://www.kankou-shimane.com/pickup/6770.html